荒川区「無責任な猫への餌やり規制」に思う
2008年10月04日(土)
荒川区の「(仮称)荒川区良好な生活環境の確保に関する条例」(無責任な猫への餌やり規制)について思うところを、本ブログに記しておきます。
すでに多くの意見が荒川区およびこの条例案を提起された荒川区議・小坂英二議員に寄せられているようですが、インターネットの掲示板上でも、この条例について賛否両論、さまざまな意見が取り上げられていることはご承知のとおりです。その中に「毒を撒けば済むことなのに」といった意見と並び、「どうせ毒を撒くのなら、ホームレスの炊き出しにも毒を盛れ」、「それならニートも同じだ」といった意見を散見します。
こうした意見が交換されている事実について、荒川区および小坂氏はいかなる見解をお持ちなのでしょう。一部の人間の極論でしかないとして放置されるのでしょうか。ここで注目しなければならないのは、条例の波紋が、猫や鳥の排除にとどまってはいないという点にあります。「迷惑」という名のもとでは、あるいは、なんら社会的利益をもたらさないという理由のもとであれば、猫はもとより、人間の命をさえ剥奪することを肯定しかねない意見が、社会の中で跋扈し始めているのです。こうした意見が市民権を得てゆきかねない状況は極めて危険です。この条例は果たして健全な条例と言えるのでしょうか。
「排除」の思想は、いかなる場であれ、いかなるものに対してであれ、極めて危険なものであることは改めて言うまでもありません。特に、「行政」という公権力が「公共性」の名の下、「利益」に反すると判断し、「条例」をもってその「排除」を正当化しようとする行為は、ナチスの優生政策となんら変わるものではありません。生命に優劣はなく、生存の権利はいかなるものも平等であり、人間はまた、いかなる生物に対しても、その生殺与奪の権利など持ちあわせてはいないのです。
ここに小坂氏のブログに掲載されている、区の建設環境委員会での質疑・応答の内容の一部を抜粋させて頂きますが、この部分は赤字の上にさらに太字になっています。すなわち、小坂氏が特に強調したい部分と考えられます。『迷惑行為者は精神的な病であることが多いため、精神科的なアプローチをしながら根本を直していく取り組みも必要であり、そうした対応を区にお願いしたい』(2008年09月19日)。
小坂氏が、迷惑行為者の多くが精神的な病であるとするこの意見は極めて情緒的なものであり、医学的な根拠が明白ではありません。こうした決めつけは、精神疾患を抱える人間に対する社会的偏見を助長するものであると同時に、小坂氏の精神疾患を持つ者に対する偏向を示すものであり、再考を要します。
猫の被害や苦情に対処・対応する難しさは、私自身の経験からも理解することができます。しかし、共存の方法は、丁寧に探ってゆくことで必ず解決の糸口が掴めるということも事実です。行政指導に効果がみられないことを理由に、次から次へと罰則や罰金を課す条例を制定してゆこうとする荒川区および小坂氏の姿勢は短絡的であり、かつ稚拙なものと言えます。
解決策の一案としては、動物の正しい飼育方法を指導できるボランティアを育成し、エサやりなどについての指導を民間レヴェルで行ってゆく方法などがあげられます。「身勝手なエサやり」については、動物愛護の本来のあり方と、その姿勢を啓蒙する必要があるでしょう。避妊・去勢手術の励行、それに対する行政の援助はもちろんのこと、生物との共存・共生の方向性を探ることを目的として、動物生態学等に関わる専門家を招聘してのセミナーや勉強会を開催する、などどといった方法も一考されるべきです。
また、エサやりについて批判的な住民と、エサやりに好意的な住民との間でのコンセンサスを図る機会を設定する必要があります。これについては行政が話し合いの場をセッティングする方法が有効でしょう。ただし行政の役割は反目する住民の意見を調整し、行政として何が支援できるかを提示することにあり、決定を下すことにはありません。全国の動物愛護団体などから、知識や経験を聴取することで、さらに多くの解決策を提示できる可能性があるはずです。
こうした取り組みをする上での行政側の基本姿勢は、精神疾患を疑うなどということではなく、まずなによりも地域住民の「良識」と「善意」を信じることにあります。成熟した地域コミュニティを作ることができる住民のエンパワーに期待をかけ、助力を惜しまないという姿勢を、住民側に示してゆくことが重要なのです。
荒川区は先の大戦の東京大空襲により、甚大な被害を蒙った地区でもあります。戦後六十数年を経た今、人間と動物が平和に暮らすことのできる地区に蘇ったことを思い起こせば、あらゆる地区に先駆け、動物との共存・共生を目指したコミュニティを作ることにその労を費やすことにこそ、社会的に大きな意義があると言えるのではないでしょうか。
「人間と動物の平和的共存を目指す都市宣言」をされたほうが、よほど建設的であり、先進的な地域としての地位を築くことができるのではないかという気がしてなりません。小坂氏は、この条例を全国に先駆けて実施することに誇りを感じていらっしゃるようですが、そもそもの発想のパラダイム転換が求められているように思います。
荒川区民ではありませんから、荒川区の決定に口を挟むことはなにやら内政干渉のきらいがなくもありませんが、ことは決して一自治体の問題にとどまるものではありません。この条例を前例として、あらゆる地域が弱者排斥の思想で埋め尽くされる前に、その芽を摘み取る必要があると考えます。蟻の一穴を見逃せば、後々の日本の社会に大きな禍根を残すことになるだろうことを危惧するものです。
以上、思うがままに。
【追記】
この記事の確認のために、小坂議員のブログを改めて拝見したところ、コメント欄に「愛護派の皆様へ 愛護ってなんなんですかね?不妊・去勢手術をして、苦痛を与え、短い一生に、子を育む事さえ出来ない。こんなんで猫達は幸せですかね?自由ですかね?生命の尊厳への冒涜ではないですか?人間のエゴではないですか?共に暮せないなら殺してあげるのも優しさですよ?」という、区民からの投稿があった。
「殺す」という言葉がかくも軽々しく語られていることに呆然。行政はこうした住民の生命倫理観にこそ危機感を抱く必要があるだろうにと、改めて深いため息。
写真:(上)猫嫌いが見たら卒倒だろうが、猫好きがみたら垂涎。(左)6年間のノラ生活を経て飼い猫に。でも、目つきの鋭さがなかなか消えない。苦労したんだろうなあ。
キャンキャンキャキャ~ン♪
2008年10月25日(土)
橋下徹大阪府知事が、山口県光市の母子殺害事件をめぐる弁護団への懲戒請求問題について、広島地裁が総額800万円の支払いを命じたことを論じた朝日新聞に対し、極めて激しい非難を浴びせた。そもそも橋下氏がなぜ朝日新聞だけを標的にしたのか理解不能。文末に朝日新聞、毎日新聞、中日新聞の社説の抜粋を併記してみるが、この3紙の論調にそれほどの違いはなく、いずれの社説も橋下氏の弁護士としての資質を厳しく糾している。
それにもかかわらず、橋下氏が攻撃の矛先を向けたのは朝日新聞一紙だけ。他の二紙との表現の違いといえば、弁護士資格の返上云々だが、もしかすると「資格返上」という言葉が橋下氏にとっての鬼門なのか。日の丸の手ぬぐいを額に締めて司法試験突破、その末に得た弁護士資格をそうそう簡単に剥奪されてなるものかという思いなのか。いやいやそれとも、単に朝日新聞をサヨクの新聞と「見誤った」のか(最近の権力迎合記事連発の朝日が真性「サヨク」のはずがない)。
この問題を取り上げたいくつかのブログを覗いて見ると、朝日新聞を「反日」と決めつけ、橋下氏を擁護するコメントがやたらと目立つ。なるほど、大衆が喜んで叩きそうな「敵」を作り、自らの存在を誇示することが目的だったのか。そうだとしたら、橋下氏の、コイズミズムを踏襲(「ふしゅう」じゃないですよ、麻生総理大臣殿!)したこの手法は大成功だったと言うべきか。
それにしても、(橋下氏自らがそう称したところの)「権力者」が、自分の意にそぐわないとして、特定のジャーナリズムの存在をこれほどまでに簡単に否定しまって良いものなのか。「朝日が弁護士資格返上しろって言うなら、これから事実誤認とかやりゃすぐ廃業しろと。全員首切れと。もっと言うなら戦争責任だってある。いますぐ廃業しろって」とまで言ったそうだが、戦前から戦後にかけてのジャーナリズムの変貌のプロセスを、どうやら橋下氏はご存知ないらしい。
戦時下のジャーナリズムを正確に把握していれば、朝日だけを標的としたこうした発言などまずありえない。太平洋戦争期におけるジャーナリズムの戦争加担については複雑な要素が絡み合っており、一言では言い表せないが、少なくとも戦争責任を問われるべきジャーナリズムは、こと朝日新聞だけにかぎるものではない。
個人の名誉が傷つけられたとして朝日新聞の廃刊を主張し、社員の首を切れと騒ぐ橋下氏。もし名誉毀損だと思うのなら弁護士であることこれ幸い、「個人」として法の下で戦えば良いだけのことではないか。ジャーナリズムが「権力者」の命令をもって言説を翻すことなど、余程の過ちを認める以外あってはならないことだし、まして新聞や雑誌が廃刊の事態に追い込まれるとしたら、それは「いつか来た道」でしかない。
………以下、三紙の社説から抜粋
■朝日新聞■(2008年10月3日)『橋下TV発言―弁護士資格を返上しては』歯切れのよさで人気のある橋下徹・大阪府知事のタレント弁護士時代の発言に、「弁護士失格」といわんばかりの厳しい判決が言い渡された。…判決で「少数派の基本的人権を保護する弁護士の使命や職責を正しく理解していない」とまで言われたのだから、橋下氏は深く恥じなければならない。
…少年の新たな主張について、橋下氏は大阪の読売テレビ制作の番組で、弁護団が組み立てたとしか考えられないと批判した。弁護団の懲戒を弁護士会に請求するよう呼びかけ、「一斉にかけてくださったら弁護士会も処分出さないわけにはいかない」と続けた。…そもそも橋下氏は、みずから携わってきた弁護士の責任をわかっていないのではないか。弁護士は被告の利益や権利を守るのが仕事である。弁護団の方針が世間の常識にそぐわず、気に入らないからといって、懲戒請求をしようとあおるのは、弁護士のやることではない。
…偏った番組作りをした放送局が許されないのは当然だが、法律の専門家として出演した橋下氏の責任はさらに重い。…橋下氏は判決後、弁護団に謝罪する一方で、控訴する意向を示した。判決を真剣に受け止めるならば、控訴をしないだけでなく、弁護士の資格を返上してはどうか。謝罪が形ばかりのものとみられれば、知事としての資質にも疑問が投げかけられるだろう。
■毎日新聞■(2008年10月3日)『橋下知事敗訴 判決は弁護士の自覚を促した』判決は「弁護士は少数派の基本的人権を保護すべき使命も有する。多数から批判されたことをもって、懲戒されることがあってはならない」と指摘した。
…橋下氏の発言が弁護士への大量の懲戒請求を誘い、その業務を妨害、精神的苦痛を与えたと認定したのは妥当な判断といえる。…橋下氏がその思いを述べるのは自由だ。しかし、視聴者に向かって懲戒請求を呼びかける発言は、自ら弁護士の使命を否定する行為にほかならず、許されるものではなかった。しかも、テレビ番組のコメンテーターとしての影響力を考慮すれば、その発言は多数を頼んだ魔女狩りに似た状況を作り出した。批判された側の反論が保障されていない以上、軽率な行為といわざるをえない。
さらに、橋下氏は視聴者をあおりながら、自らは懲戒を求めていない。その発言がどこまで思慮を重ねたものか疑わしい。…一般市民が、橋下氏の扇動で一つの方向に群がる感覚で懲戒を請求する社会のありようもまた、健全とはいえない。
■中日新聞■(2008年10月6日)『橋下知事敗訴 弁護士失格のTV発言』タレントとしての軽い“乗り”の発言が、他人の名誉を傷つけた。橋下徹大阪府知事が弁護士失格と批判されるのは当然だが、無責任なコメントがはびこるテレビ番組の作り方を変えるべきだ。…弁護団から橋下氏への慰謝料請求を審理していた広島地裁は、橋下発言には根拠がなく名誉棄損だと認定し、計八百万円の支払いを命じた。
マスメディアを通じて懲戒請求を呼びかけたことを不法行為と断定し、軽はずみなコメントを厳しく戒めたのである。判決文には「少数派の基本的人権も保護すべき弁護士の使命、多数から批判されたからといって弁護活動が制限されたり懲戒されてはならないことを、橋下氏は理解していない」とまである。法律家としての基本常識もわきまえていないと言わんばかりである。
…高度な専門知識と厳しい倫理観が求められる専門職である弁護士の資格が疑われる。判決後に橋下氏は謝罪したが、控訴するという。判決は不当ではないと言いながら控訴するのは、法律家として理解しがたい。…政治家も弁護士も、説得力ある論理と、それを相手が納得するように説明する言語能力がなければならない。言葉の重さと節度を自覚すべきだ。…情報の本質を伝えることとは無縁の番組作りが橋下放言の背景にあるのではないか。だとすれば単なるタレント弁護士の暴走ではすまされない。
写真:(上)我が家で一番気の弱いミミちゃん。しょっちゅう鳴いています。(下)我が家で一番気の強いサビちゃん、滅多なことでは鳴きません。
プロフィール
鈍行列車の「ちゅうちゅうとれいん」はいつも満員(ふ~っ…)!時々燃料切れを起こして更新が滞ることがありますが、どうぞ末永くおつきあいくださいネ。姉妹編の「あけみ参上つかまちゅり~」もよろしくお願い致します。
Cast
猫たちの名前が変わりました。別に改名したわけではなく、これまで「ブログネーム」だったのを「本名」にしたというだけのことです。たくさんいすぎてジュリママの頭が混乱しはじめまして…^^;

寿々(suzu):1994年生まれ。仕事部屋に入れる唯一の子。人の言葉が80%ぐらいわかるみたい。

福太郎(fukutarou):1997年4月~2008年3月20日。生まれ変わって我が家に戻ってきてくれるのを今か今かと待っています。

樹里絵(jyurie):1998年生まれ。マイペースで世話が焼けません。性格温厚で超パパっ子。

桃之輔(momonosuke):1999年生まれ。甘えっ子ですが、ものすごく臆病で、ほとんど一日中、布団の中に隠れています。

亜依子(aiko):2000年生まれ。自己主張が強くて偏屈ですが、そこがまた可愛いいんだなあ。超ママっ子です。

真美(mami):2005年生まれ。外見はタヌキそのもの、性格は犬そのものです。才気煥発で気性が激しい。

美意子(miiko):2005年生まれ? 歯を見ると6、7歳…本当は何歳だろう?一日中、文句たらたら言っています。

奈々(nana):2001年生まれ。ようやくノラっぽさもなくなり、明るい陽気な子になりました。
明美(akemi)にゃ三郎(nyasaburou)、小牧(komaki):2007年生まれ。仲良し3兄弟。毎日楽しそうに暮らしています。

里音(satone):2009年8月保護。どんな生い立ちでどんなニャン生を過ごしてきたのか、それは謎です。未来を生きる猫!
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