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正義という名の横暴

2008年04月26日(土)

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「山口県光市で1999年に起きた母子殺害事件の差し戻し控訴審の判決公判が22日、広島高裁で開かれ、同裁判所は殺人と強姦致死などの罪に問われた当時18歳の元少年(27)に死刑を言い渡した。」(4月22日 AFP)

事件の凄惨さについては筆舌尽くし難く、被害に会われた母子の無念の気持ち、ご家族やご親族の心痛を思うと、胸が張り裂けそうになる。犯行におよんだ(元)少年に対しては、いかなる理由があろうと情状酌量の余地などあるものかと、心情的にはそう思う。罪の償いのために、最も重い罰を受けるべきだと。

けれど、この判決に言及しているブログのほとんどが(膨大なブログの中の、僅かなブログにしか過ぎないのだが)、死刑だ!そら見ろ、死刑だと、鬼の首を取ったような書き方をしていることに対しては、強い違和感を感じざるをえない。死刑判決の下った被告に対し、民衆がこぞって石礫を投げる光景は異様だ。

26枚の一般傍聴券に3886人が詰めかけたというが、傍聴券に群がった人々の目的は、ほんとうのところなんだったのだろう。法の専門家は除外するとして、傍聴を望む一般市民の興味は、事件当時18歳未満だった被告が、2審の無期懲役判決の差し戻しによって、27歳となった今、死刑求刑を受けるのかどうかという法的な興味からだったのか。

経緯に詳しくないが、某番組で橋下現大阪府知事が、光市母子殺人事件弁護団(橋下氏言うところのカルト弁護士たち)に対し懲戒請求を出そうと呼びかけ、多くの一般市民がそれに応じたそうだが、その延長線上のことだったのか。

死刑制度については、未だ多くの問題が山積している。そもそも死刑とは何なのか、国民の生命に手をかけることが許される「国家」のシステムとは一体どういうものなのか、あるいは「報復」という極めて抽象的な概念をどう解釈するのか。

高橋哲哉氏は『戦後責任論』(講談社学術文庫)の中で、ハンナ・アーレントがアイヒマンの死刑を支持したことについて、「アーレントが『ユダヤ人を殺したナチは生きる権利をもたない』といって死刑を支持するとき、そこに『世界に誰が住み誰が住んではならないかを決定する権利があるかのように人を殺す』という、アーレントが拒否したはずの全体主義の論理がある形で反復されているように感じる」と記す。アーレントの思考をもってしても、死刑は矛盾の中に押しやられてしまうということか。

死刑を当然のこととする民衆の、けれど誰一人として囚人の首に縄をかけるわけでもなく、自ら処刑台のボタンを押すでもなく、処刑された囚人の遺体に接するでもない。実にあっけらかんとした、他者意識の中で死刑は肯定される。死刑がこれほど安易に語られる理由はそこにあるのか。

さらに気にかかるのは、「正義」を前提とした死刑肯定の意見に対しては、いかなる反論も許されそうにないこと。そんな雰囲気が蔓延する時代は極めて危険だ。毎日新聞(4月24日・夕刊)に、編集委員の金子秀敏氏による「人民による言論封殺」と題するコラムが掲載されていた。チベット暴動に対し、中国政府のみならず、中国の一般市民の間でさまざまな言論封殺が始まっているという。「人民の人民による言論封殺」への警戒感を示す記事だった。

日本もまた、同様の兆候を見せはじめてはいまいか。KY(空気が読めない)な人を揶揄する人々は、すべてに同一性を求める。「正義」という印籠を見せつけられれば、すべての人々はその「正義」にひれ伏し、肯定しなければればならない。それに異を唱えることを許さない空気が国中に蔓延した時、どんなことが起こるのか、起こったのか、日本人はすでに経験したはずではないか。

光市母子殺人事件も心情とは別に、あらゆる角度から冷静に、犯罪を、そして判決を読み解く必要があるのではないか。決して煽るなかれ、そして煽られるなかれ…。

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写真:(上)猫草に群がっても、この子たちの考えていることはてんでんばらばら。(下)かつおの生利をくれたって、あたしはあたしヨ。


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コメント一覧(2)

この事件については、、、考えさせられますね。
私はこの判決がくだったあとの会見で
「死刑という判決の十字架を私も一生背負っていく」という言葉に釘付けになりました。
ジュリママさんのようにすばらしい表現力はないけれど、言いたいことはよくわかります。

りんご | 2008年05月01日 19:52

りんごさん

たとえ加害者がこの世から消えても、
被害者のご家族の方の悲しみは消えません。
「十字架を背負っていく」という言葉、
ほんとうに重い言葉ですね・・・。
りんごさんも、
とても繊細な感性をお持ちでいらっしゃるのですね。

ジュリママ | 2008年05月03日 14:32

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