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復活節のカンタータ

2008年04月01日(火)

20080401-01.jpg

しばらく小休止していた、教会暦によるバッハ・カンタータシリーズが始まった。昨年11月にメンデルスゾーンの<エリア>を弾き、あまりの大曲に力尽きたというわけでもなかったのだけれど、まあそれに近い心境でバイオリンに触れることなく過ごしていた。

それよりもここ2ヶ月間はフクの看病に追われ、朝から晩までフク、フクと声をかけ続ける生活、楽器どころではなかった。疲れた体と心を音楽で癒そうという気にもなれず、楽しみにしていた演奏会を2回フイにし、CDさえ聴かずにいた。久しぶりにバイオリンのケースを開けると、蓋の内側に猫の毛がついていて、これは間違いなくフクちゃんの毛。バイオリンを出した後の空間は、フクが丸まって寝るのに恰好の場所だった。

その昔飼っていた犬のヒロは、バイオリンを弾きはじめると必ずワォーン、ワォワオーンと遠吠えをする。チャコという気難しい猫は、バイオリンのケースを開ける仕草をするだけで、冷蔵庫の裏に隠れてしまった。ずいぶんと失礼な話だけれど、人間なら耳を塞ぎたいといったところだったのか。

それほど犬猫の評判芳しくないバイオリンだけれど、フクだけは練習の間、どれほど音程が狂おうと、キーキーという耳障りな音を立てようと、平然とケースの中で寝ていた。練習が終わっても、気持ち良さそうに寝ているフクを起こすのがかわいそうで、起きるまでそのまま。バイオリンは所在無くテーブルの上に放り出されていた。どうして死んじゃったのよぉ、と、ぽそりと呟きながらの練習再開。

今回のシリーズは、(よりにもよって)「復活節」のためのカンタータで始まる。第一日目は31番<天は笑い、地は歓呼す(Der Himmel lacht! Die Erde jubilieret)>。死は復活の大前提であり、だから喜びに溢れたものとして死が謳われる。

特に九曲目、他のカンタータではしばしば葬送を象徴するものとして用いられるコラールが、ここでは、イエスの復活を信じることによって、自らもまた永遠の生命が約束されるという、歓喜に満ちたものとして表現される。だから決して暗く弾かないでくださいね、という指揮者の指示。

指揮者がそんな要望を出した直後、練習を聞いていた某大御所の歌手が突如、「死は決して悲しいものではなく、むしろ永遠の生命を得るという素晴らしいものなのよ。内村鑑三はね、お嬢さんのルツ子さんが死んだ時、『ルツ子さんバンザイ!』と叫んだのよ」と口を挟む。

カンタータは弾くのも聴くのも好きだけれど、キリスト教そのものに詳しいわけではないし、信者でもなく、まして内村鑑三の思想など知る由もないから、内村の発した言葉の真理を読み解く術などまったくない。凡庸な私は、キリストの再臨と復活の信仰によってしか、我が子の死を受け入れることなどできなかったのだろうという、内村の「親」としての悲しみを思うだけ。

フクの死は「消滅」。いつしか私が無に帰す時、私の記憶の中に生き続けたフクも同時に無に帰してしまう。それで十分なように思う。命に限りがあればこその「愛」。二度と会えないからこその「今」。

あと2日、復活節のためのカンタータ演奏が続く。

20080401-02.jpg  

写真:(上)バイオリンケースで寝ているフクの最後の写真。(下)庭のモクレンが満開。モクレンはまだまだこの先もずっと咲き続ける。


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コメント一覧(4)

本当に可愛らしい写真ですね。
バイオリンとにゃんこ、なんて素敵な組み合わせなのでしょう。

>命に限りがあればこその「愛」。二度と会えないからこその「今」。

これは父が亡くなってから、もの凄く感じるようになりました。
命も人生も、限りあるからこそ美しいって。

私はゲゲゲの鬼太郎の目玉オヤジのように、すぐ側に
いるような気持ちでずっと生きています。

shibako | 2008年04月03日 04:29

shibakoさま
コメントをありがとうございます。
「限りあるからこそ美しい」・・・
しみじみそう思います。

shibakoさん、
お父様のことをとても尊敬されていらしたのですね。
文面からなんとなくそんな思いが伝わってきます。
これから先も、
きっとお力になってくださることと思いますよ。
目玉オヤジは永遠に不滅ですもの・・・ネッ!

ジュリママ | 2008年04月04日 16:38

ヴァイオリンケースで、すやすや眠るフクちゃん、きっとジュリママさんの、奏でるバイオリンの音色が、大好きだったのですね。
天に昇っていく気持ちを表現する手段を持っている人は、空が飛べる人くらい、ステキです。

新しいブログの表紙、もしかしたらお手製でしょうか?
ぽっこり私のツボにはまりました。ページを開くのが楽しみです。

ラミーチョコ | 2008年04月04日 20:23

ラミーチョコさん

ラミーチョコさんは、
「文章」という素晴らしい表現手段をお持ちでいらっしゃる。
「言葉」の羽根で空が飛べる人!

バナーの絵は残念ながらお手製ではありません。
でもかわいいでしょ?
まだきれいに作っていないので、
これから手直ししますけれど、
ツボにはまっていただけると嬉しいなあ!

(コメントの公開が遅れて申し訳ありませんでした)

ジュリママ | 2008年04月07日 11:54

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鈍行列車の「ちゅうちゅうとれいん」はいつも満員(ふ~っ…)!時々燃料切れを起こして更新が滞ることがありますが、どうぞ末永くおつきあいくださいネ。姉妹編の「あけみ参上つかまちゅり~」もよろしくお願い致します。

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樹里絵(jyurie):1998年生まれ。マイペースで世話が焼けません。性格温厚で超パパっ子。

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桃之輔(momonosuke):1999年生まれ。甘えっ子ですが、ものすごく臆病で、ほとんど一日中、布団の中に隠れています。

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亜依子(aiko):2000年生まれ。自己主張が強くて偏屈ですが、そこがまた可愛いいんだなあ。超ママっ子です。

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