穏やかな時のために
2008年03月18日(火)
フクちゃんの容態が悪化してしまった。口を痛そうにして食事ができなくなり、動物病院に連れていったのが始まりだったから、当初は歯のことばかり、歯根を取る手術という段になって呼吸が苦しそうなことの気づき、その後は心臓のことばかりに気を取られてしまった。けれど、どうやらフクの命を着々と蝕んでいたのは、悪性の繊維肉腫だったようだ。
背中と胸、そして口腔内。背中と胸は目に見えるところにあるから大層気になっていたが、それ以上に問題だったは、口腔内にもできていた腫瘍。これが自壊し、上顎がえぐられはじめたと思ったら、昨日は遂に頬を貫通してしまった。かわいらしかった頬に直径2ミリほどの穴がぽっかり。痛々しい。
今後、飼い主ができるケアの方法を獣医さんに尋ねたが、打つ手はなさそう。容態が安定していれば、まだ手術の可能性が考えられるが、それでも確実に再発すると言う。昨日の動物病院、たまたま私の前にいた患犬さんと患猫さんは、それぞれ、舌癌と下顎にできた癌を手術をしたばかり。舌癌のワンちゃんは舌の3分の2を切除し、猫さんは下顎を切除してしまったのだとか。口からの食事はもう望めない。
酸素室に入れるという、たったそれだけのことでさえ過剰医療だったのではないか、却って苦痛を延ばしてしまったのではないかと悩んでいたから、それ以上の治療に踏み切ることなど到底できないし、その気もない。獣医さんでさえ、先の患犬たちの手術をしながら、過剰医療なのではないかとずいぶん悩んでしまったらしい。
今朝は、声をかけると口が「にゃあ」という形で動いたので、これなら食事も与えられると強制給餌をしたが、最後の一口を口の中に押し込んだ時、指を思いきり噛まれて負傷。こんなに弱っているのにこんなに力を出して…。ものすごい痛みが走ったが、痛さよりも先に、最後の最後まで、これほどの力を振り絞って必死で生きようとしているフクをこんな目に遭わせ、苦しませている病魔が心底憎たらしくてならなかった。
人間同様、モルヒネという選択肢もありますよと獣医さんに言われ、それも一晩考えたが、意識はすでに遠く、痛みを実感しているとは思えない。緩和ケアを、もっと前の段階で考えるべきだったのではないかと後悔するが、過ぎてしまった時間はもう戻ってこない。
そんなことを思っていたら、たまたま今日の朝日新聞にターミナルケアのことが掲載されていた。人間の場合には患者の意思が優先されるが、動物の場合、最後をどう迎えるか、どう迎えさせるかの選択はひたすら飼い主の判断に委ねられていて、この判断が実に難しい。今まで幾度となく飼い犬、飼い猫、そして外猫たちの最後を看取ってきたが、どれひとつとして後悔していないものなどない。
もっと最先端の治療を受けさせてあげれば良かったと後悔するケース、あんなに過酷な治療を受けさせず、もっとラクに過ごさせてあげればよかったと後悔するケース。どちらも、飼い主としての最善は尽くしたはずなのに、未だに煩悶し続けている。
その昔、とある病院のホスピスで友人と二人でバイオリンの演奏をさせていただいたことがあった。フロアには歩くこともままならず、ベッドに横になられたままの患者さんたち。死に向かって一日一日を過ごす。
その心を癒すほどの実力などないから、なんだかとても申し訳ないような気持ちでいっぱいだったが、それでも、意識が薄れたままベットに横たわっていらした年配のご婦人が、演奏後、それはそれは柔らかな笑顔を見せてくださったことが今でも忘れられない。「穏やかな時」に向かう、静かな場面だった。
まだフクは力を振り絞って生きているのだもの、あきらめる気にはなれないけれど、それでももう、静かに見守ってあげることが最善の方法、飼い主の愛情なのかもしれない。腰をさすってあげると、苦しい息の中でもグルグルと喉を鳴らすフク。
ねえ、どうすればあと僅かな日々を穏やかに過ごさせてあげられられるかしら?側にいてあげることしかできないけれど、それでもいい?
写真:(上)数日前、酸素室から出て馴染みのカゴで一休み。検査のために毛を剃られた部分に、らくだのコブのように姿を見せているのが腫瘍。すっかり痩せてしまった。(下)フクが回復するようにと、元気な「オカメザクラ」を庭に植えた。タゴちゃんは満足?
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プロフィール
鈍行列車の「ちゅうちゅうとれいん」はいつも満員(ふ~っ…)!時々燃料切れを起こして更新が滞ることがありますが、どうぞ末永くおつきあいくださいネ。姉妹編の「あけみ参上つかまちゅり~」もよろしくお願い致します。
Cast

樹里絵(jyurie):1998年生まれ。マイペースで世話が焼けません。性格温厚で超パパっ子。

桃之輔(momonosuke):1999年生まれ。甘えっ子ですが、ものすごく臆病で、ほとんど一日中、布団の中に隠れています。

亜依子(aiko):2000年生まれ。自己主張が強くて偏屈ですが、そこがまた可愛いいんだなあ。超ママっ子です。

真美(mami):2005年生まれ。外見はタヌキそのもの、性格は犬そのものです。才気煥発で気性が激しい。

美意子(miiko):2005年生まれ? 歯を見ると6、7歳…本当は何歳だろう?一日中、文句たらたら言っています。

奈々(nana):2001年生まれ。ようやくノラっぽさもなくなり、明るい陽気な子になりました。
明美(akemi)にゃ三郎(nyasaburou)、小牧(komaki):2007年生まれ。仲良し3兄弟。毎日楽しそうに暮らしています。

里音(satone):2009年8月保護。どんな生い立ちでどんなニャン生を過ごしてきたのか、それは謎です。未来を生きる猫!

寿々(suzu):1994年12月~2010年3月12日。パパの仕事部屋に入れた唯一の子。人の気持ちがよくわかる、とてもとても頭の良い子でした。

福太郎(fukutarou):1997年4月~2008年3月20日。陽気で甘えっ子。抱っこされるのが大好きでした。お母さん代わりだった寿々との再会、「欣喜猫躍」していることでしょう。
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コメント一覧(2)
ジュリママさん…。深刻な状況がさらに深まっていたのですね。
読みながら、そして今コメントを入れながら涙があふれてきます。
フクちゃんの痛々しい様子が文章から伝わり、
ジュリママさんの苦しい胸のうちを察すると私も辛くて…。
でもジュリママさん、迷ったり悩んだりしないでください。
ジュリママさんはフクちゃんのために出来るだけのことをされてきました。
治って欲しい、という強い気持ちによるものですから
後悔はなさったり、これからのことを焦って考えないでください。
文章の最後にジュリママさんご自身が書かれているように
あきらめず、フクちゃんのそばにいて、たくさん話しかけて
「今」のこの時を幸福な時間にしてほしいと思います。
きっとジュリママさんはいろいろ後悔して
フクちゃんに「ごめんね」って語りかけていらっしゃることでしょう。
でもフクちゃんはジュリママさんのことをちっとも悪く思っていませんよ。
ジュリママさんが悲しむ姿それこそが、フクちゃんは悲しいんだと思います。
それよりもそばにいてくれて撫でて優しい声をかけてくれるだけで
フクちゃんは満ち足りた気持ちになるような気がします。
フクちゃん、みんながあなたのことを応援しています。
充分頑張っているのだから、がんばれ、なんて軽々しく言えないけど
良くなってほしいと心から願っています。
ねこぼーし | 2008年03月19日 06:55
ねこぼーしさん
フク、力尽きてしまいました。シロバナタンポポに名前をつけてくださり、フクのために祈ってくださったその優しいお気持ち、フクにもきっと通じたことと思います。
タンポポの綿毛に乗って、フワリと私の心に戻ってきてくれるでしょう。その日を待っています。ほんとうにありがとうございました。
ジュリママ | 2008年03月20日 13:21