サクベエがいなくなった日
2007年06月10日(日)
戦争がどれほど悲惨なものであったのかを知ることができるのは、せいぜい書物の上でか、人の語り伝え。戦争を体験した世代からはほど遠いけれど(?)、それでもほんの小さな子供の頃から、戦争だけは嫌だと思い続けてきたのは、母から、戦争中に飼っていた犬を供出した日のことを聞かされていたからか。
当時、両親はサクベエという名前の柴犬を飼っていた。昔のことだから、ほとんどの家で犬は放し飼い。ある日買い物から帰ってくると、必ず玄関に出迎えてくれるはずの犬の姿が見えない。どこに行ったのかと家の周りを探し歩いていたら、近所の人が、今しがた犬獲りに捕まり、麻袋に入れて持っていかれたばかり、と教えてくれた。
気の強い母のこと、「非国民」と言われることなんて、想像はついたがお構いなし。麻袋を担いだおじさんを探しだし、その犬は私の家の犬だから返しなさいよ、と迫ったらしい。所詮オンナコドモの言うこと、おじさん一向に怯まず、これは国の命令、兵隊さんのために犬を供出するのは国民の義務だと一蹴。しばらく言い争ったがどうにもならず、麻袋の中で声ひとつ出さないサクベエと、泣く泣くお別れをして引き返してきたという。
今度はあのウチの犬だと、犬獲りのおじさんが近所に言いふらしていたらしいから、しっかり繋いで庭の奥、あるいは家の中から一歩も出さず、厳重に匿っておけば良かったものを、それでも、たぶん結果は同じだったか。その頃、国の号令下、末端の地域にまで組織されていたのが隣組。とんとんとんからりっと隣組・・・なんていう歌が流行ったが、そこで歌われているような「助け合い」は表向きのカオ、国民の一人残らず、それこそ猫の子一匹逃すことなく国家の統制下に置くための、早い話が相互監視システムだもの、犬を隠しているなんてすぐに知れ渡る。
捕まえた犬は一箇所に集めて棒で殴り殺し、毛皮を剥いで防寒用の手袋や帽子に加工、軍に供給したというが、全部が全部のはずなはく、人が食うに困るほどの苦しい戦況、パーマをかけるのはやめましょうというのと同じ次元、ペットを飼うなんて贅沢、それだけの理由で捕獲され、命を奪われた犬もたくさんいたはず。文字通りの「犬死」
母の怒りと嘆きは、戦後何十年たっても薄らぐことはなく、だから、ことあるごとに聞かされ続けたこの話。そのたびに胸が痛み、耳を塞ぎたくなったが、お陰で戦争の悲惨さだけは、心の奥底にしっかりと刻みつけられた。ただし、母親の薫陶よろしく、戦争と聞いてまず思い浮かぶのが動物達の悲劇、という「非国民」ぶり。
どんな命であれ、その生殺与奪権を国家が握っているという事実は、恐ろしくもあり、馬鹿馬鹿しくもある。権力亡者、金亡者の為政者達、国を守るため、国民を守るための防衛なんて本気で考えているはずもなく、戦争も利権の道具、結局は誰かが何かで「トク」する仕組み。そんなことのために、人にせよ何にせよ、あたら「命」を投げ出す必要など毛頭ないはず。
写真:(上)ココちゃんは6年間のノラ生活を経て、ようやく家猫。守ってあげなくちゃ。(左)1941年発行の『臣民の道』は、文部省が各学校に配布した小冊子。隣組についても「隣保苦楽を共にするの風は、古来の尊い伝統」「隣保相扶け隣人相戒めて道徳的修練に励み、さらに国策萬般の普及徹底に協力する最下部組織として重要なる意義を有する。」などと記述されている。
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プロフィール
鈍行列車の「ちゅうちゅうとれいん」はいつも満員(ふ~っ…)!時々燃料切れを起こして更新が滞ることがありますが、どうぞ末永くおつきあいくださいネ。姉妹編の「あけみ参上つかまちゅり~」もよろしくお願い致します。
Cast

樹里絵(jyurie):1998年生まれ。マイペースで世話が焼けません。性格温厚で超パパっ子。

桃之輔(momonosuke):1999年生まれ。甘えっ子ですが、ものすごく臆病で、ほとんど一日中、布団の中に隠れています。

亜依子(aiko):2000年生まれ。自己主張が強くて偏屈ですが、そこがまた可愛いいんだなあ。超ママっ子です。

真美(mami):2005年生まれ。外見はタヌキそのもの、性格は犬そのものです。才気煥発で気性が激しい。

美意子(miiko):2005年生まれ? 歯を見ると6、7歳…本当は何歳だろう?一日中、文句たらたら言っています。

奈々(nana):2001年生まれ。ようやくノラっぽさもなくなり、明るい陽気な子になりました。
明美(akemi)にゃ三郎(nyasaburou)、小牧(komaki):2007年生まれ。仲良し3兄弟。毎日楽しそうに暮らしています。

里音(satone):2009年8月保護。どんな生い立ちでどんなニャン生を過ごしてきたのか、それは謎です。未来を生きる猫!

寿々(suzu):1994年12月~2010年3月12日。パパの仕事部屋に入れた唯一の子。人の気持ちがよくわかる、とてもとても頭の良い子でした。

福太郎(fukutarou):1997年4月~2008年3月20日。陽気で甘えっ子。抱っこされるのが大好きでした。お母さん代わりだった寿々との再会、「欣喜猫躍」していることでしょう。
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コメント一覧(2)
ジュリママさん、
先日はご訪問ありがとうございました。
戦時中の動物園の象の話を聞いた時、犬や猫は?
と思いましたが、悲しい予想しか浮かびませんでした。
やはり、こんなことが行われていたのですね。
兵隊さんのため、非常時に人か犬かといわれたら、返す言葉がなくなります。
今自分が大切にしているものの全てが、平和であることが条件で成り立っていますね。
6月8日のジュリちゃんの写真、クロネコチャンと、とてもよく似ています。
ラミーチョコ | 2007年06月13日 10:57
ラミーチョコさん、コメントをありがとうございます。
平和であってほしいですね、つくづくそう思います。
ジュリママ | 2007年06月13日 18:48