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カテゴリー:楽器・音楽

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ショームに魅せられた日

2007年09月28日(金)

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知人のオーボエ吹きが楽器をショームに持ち替え、サントリーホールのオルガンレクチャーコンサート「支倉常長 伊達政宗がヨーロッパに遣わした一人の侍の旅」に出演するというので、出かけた。

支倉常長(はせくら つねなが)は伊達政宗の家臣。政宗の命を受け、スペイン人のフランシスコ会宣教師ソテロと共に、慶長遣欧使節として1613年9月15日、ローマ教皇、スペイン国王の元へ、全長わずか55メートルというサン・ファン・バウティスタ号で月ノ浦を出帆。

メキシコ、ローマ、スペインと、陸路を交えた7年間にも及ぶ長旅となったが、その目的は通商交渉。解説の皆川達夫氏によれば、「お上」の考えることはいつの時代も同じ(・・・で愚か)だったようで、国が栄えるためには強い戦力が必要、つまり武器の輸入が目的のひとつだったとか。

この話にショームがどう関係してくるのかというと、メキシコに到着した時に、恐らく日本人を歓迎したのが、ショームの楽隊だったんじゃないかと。ショームというのはオーボエの祖先で、ポルトガル語だとチャラメラ(charamela)、イタリアだとチャラメッラ(ciaramella)、そう、あのラーメン屋さんの屋台でおなじみのチャルメラ。

一本だけの演奏だといかにもラーメン屋さんの音色だが、もともと軍隊が戸外で使用していたという楽器だけのことはあって、10本集まるとなかなか豪勢で、すっかりショームのファンになってしまった。(しかし不思議なのは、どうしてラーメン屋さんがショームを吹いたのだろう?)

ショームの他に、恐らく支倉がスペインやローマの教会で聴いたと思われるオルガン曲、グレゴリオ聖歌、ミサ曲、さらにはスペイン民謡と、盛りだくさんの音楽。楽器も、リュートあり、ガンバあり、最後に琴の演奏まで加わったけれど、ちょっと盛りだくさん過ぎて冗長になり、却って印象の薄い演奏会になってしまった。

で、ショームの楽隊による歓迎を受けた支倉、その後スペイン国王とローマ教皇に謁見するも通商交渉は成功せず。その間にマドリードで洗礼を受け、1620年にようやく帰国することができたが、その時すでに日本では厳しい禁教令。支倉は冷遇され、翌年、失意のうちに死を迎えたという。

支倉は、教会音楽などの楽譜も持ち帰ったようだが、それらすべてが、キリスト教の弾圧下、封印されてしまったらしい。そして鎖国。西洋音楽こそが音楽、などとは思わないけれど、それでも1853年にペリー率いる黒船が来航するまでの二百数十年に渡る鎖国によって、日本の、西洋音楽の受容が遅れてしまったことは、かえすがえすも残念。

鎖国あればこそ、日本の伝統文化が育まれたのだという鎖国肯定論もあるが、鎖国していたその間、西洋ではモンテヴェルディ、シュッツ、ヘンデル、ハイドン、バッハ、モ-ツァルトなどといった大作曲家達が活躍していたのだもの、ああ、なんてもったいない…。

しかも鎖国、オランダが、ポルトガル、スペインと東洋貿易の覇権を争い、対日貿易の独占を狙って、幕府に、制限貿易を勧めた(唆した?)結果だったとすれば、またしても経済至上主義。いつの時代も、為政者が優先するものは文化に非ず…ということか。

レクチャーコンサートということなので、時々居眠りをしながら、まじめなことを考えたりもしたけれど、この日のコンサートの一番の収穫はショームバンド。CDを出さないかしら。

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写真:(上)友人のバイオリン製作者が作ってくれたバロックバイオリン。ショームほど時代は遡らないが、バイオリンの前身。モダンのバイオリンとの顕著な違いはアゴあてがないこと。弓の形状も異なる。(下)ロンバウツ((1597-1637)の『五感の寓意』。テオルボを奏でる男性の足元にショームが描かれている。


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ゲイジツの秋・・・

2007年10月06日(土)

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昼食を食べる時のBGMにと、テレビをつけるとストラヴィンスキー。実は我が家、NHKから民放まで、どのチャンネルも見ることができない。・・・というか、夫はともかくも、妻は、リモコンでどうやればチャンネルに合わせられるのか、その方法を知らないという超アナログ人間…。

見ることができるのはCSで、大抵、クラシカジャパンかシアターTV、もしくは日本映画チャンネルかシネフィルイマジカ。たま~に疲れている時に旅チャンネルを見て、旅行に行った気分になるぐらい。

若い子たちの早口と高い声が苦手になり始めたのは、ずいぶん前のこと。老いてしまったのかなんなのかわからないけれど、現代のテンポについていけない自分を発見して以来、NHK&民放テレビを見なくなってしまった。(受信料は払っているのになあ・・・)

食事時は原則としてテレビの電源は入れないのだけれど、夫の出かけている時だけはデレッと羽根を伸ばす。最近は日本映画チャンネルで立て続けに松田優作を観て感激してしまった。実はその昔、吉祥寺の寂れた映画館で、松田優作主演映画の5本立てというのを観たりしたほどの大ファン。

どこが好きなんだろう…今改めて見ると、どこが好きだったのか、その理由がよくわからないのだけれど、早逝する人というのは、どことなく「悲運」を予感させるものを持っていて、人間の生の不条理を全身に纏っているような雰囲気。そこに、なんともいえない魅力を感じてしまっていたのかも知れない。あまり健全とは思えないけど。

それはともかくも、本日のストラヴィンスキーの出し物はバレエ音楽『きつね』。ストラヴィンスキーは大好きな作曲家。とりわけ今日は2004年のウィーン芸術週間で、ブーレーズが指揮し、アンサンブル・アンテルコンタンポランが演奏したという極上のもの。

演奏の素晴らしさは言うにおよばず、演出のあまりの見事さに思わずため息が出てしまうほどだった。鶏を何とか外に誘き出して食べようとする狐と、その周りを囲む猫や羊たち。色彩感、構成感が実に素晴らしい。せっかくだったのでテレビの画面をデジカメで写してみたけれど、これじゃ何がなんだかわらないか?(おまけに我が家は21インチの古ぼけたテレビ・・・)

次に演奏されたのがシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」。これがまたまた、もう大好きなんだなあ。この演出も秀逸で、監獄を思わせる檻の中にソプラノのアニヤ・シリアとブーレーズ、そして器楽演奏者達がすべて入っているという光景の中で物語が展開する。異界を眺めている気分だった。

ただ、この檻の中にひとつだけ気になるものがあって、それは高いポールのてっぺんに座っているお猿さん。30分ほどの演奏時間、顔だけは動かすものの、ずっと同じ姿勢のまま。猿がそんなにじっとしていられるはずはなく、だから手とか足を縛られているんじゃないかしら、あるいはボードに接着剤でくっつけられていたりして…と、そればかりが気になって仕方がなかった。

クラリネットの甲高い音などには反応しないのだけれど、ピアノの音が苦手らしく、ピアノが鳴り響くとビクっとする。かわいそうになってしまい、最後にはそのことばかりが気になって、曲の結末はどこへやら。やれやれ、動物好きというのも良し悪し。

ところで敬愛するソプラノ歌手のT先生、来年、70歳をお祝いしてのリサイタルでこの『月に憑かれたピエロ』も歌われるとか。アニヤ・シリアも70歳ぐらいのはずで、年など関係なく、むしろその年齢だからこその見事な歌唱ぶりだった。

T先生もさぞ素晴らしい歌声を披露してくださるに違いない。かなりの適役と思うのだけれど、でもこれって、少々狂気を感じさせる人にしかコナセナイ。だから、期待して失礼にあたらないものかしら…いや、狂気あってこそ芸術家というもの。

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写真:(上)ストラヴィンスキー『きつね』の一場面。後ろ向きになっているのは猫。(左)シェーンベルク『月に憑かれたピエロ』。左のポールの上にお猿さんがいる。


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プロフィール

ジュリママと猫たちを乗せて走る鈍行列車のちゅうちゅうとれいん。車窓から見える風景を、気ままに書き綴るブログです。あけみちゃんの絵日記、『あけみ参上つかまちゅりーっ!』もどうぞよろしく。どちらもボチボチの更新ですが、末永くおつきあい頂ければ嬉しく思います。

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